モンスター(百田尚樹)

読書

すずもりは昔から、極端な行動をとってしまう「エネルギー過剰な人」にすごく興味があるので、この本のレビューを見てネットですぐ取り寄せて一気に読了しました。

自分の努力で美しい容姿になって絶大な力を手に入れた主人公が、忘れられない男のもとへ帰ってくるといったシンプルなストーリーですが、ひとつのことに突っ走る真っ直ぐすぎる主人公のパワーにはただ圧倒されました。

生まれながら極端に容姿に恵まれなかった主人公・和子は、幼少時から理不尽な扱いを受け続ける日々を過ごしていて、高校時代に片思いしていた同級生・英介への傷害事件を起こしてしまいます。

そのことをきっかけに、家族からも縁を切られてしまった和子は短大進学とともに故郷を離れ、戸籍の氏名も変え、新たに「未帆」として誰も自分のことを知らない土地での生活をはじめます。

短大生活でも、彼女は容姿でつらい経験をします。

高校時代までのように、あからさまにネガティブなメッセージや態度を受けることは少なくなった代わりに、待っていたのは” 分別ある人たち ”からの憐みの視線でした。

未帆は、ついに整形手術を受ける決心をします。

それからは、ただ整形手術を受けつづけるために手段を選ばずに高額な収入源を求め、20年近くの歳月をかけて、誰もが惹きつけられるほぼ完璧な美を手に入れます。

外見を理想へ近づけていく過程では、収入を得るためアングラな世界に足を踏み入れたり、男性から好意を寄せられることも少なからずありましたが、英介への想いは一貫して変わりませんでした。

故郷を離れてから約20年。

別人の容姿に生まれ変わった未帆は、「英介に自然な形で再会するため」だけに、故郷に高級レストランを構えてオーナーになり、何か月も彼の来店を待ち続けます。

故郷では、かつて未帆から好意を伝えられた際にひどい仕打ちをした中学時代の同級生の男をはじめ、誰も彼女が和子であることに気付きません。

完璧な容姿を手に入れるため長年無理を続けた代償で、30代にもかかわらず、未帆の健康状態はかなり悪化していました。

そんな中、来店を待ちわびていた英介が、ようやく未帆のレストランへ訪れました。

未帆の思惑通り、ほどなく美しさのとりこになった彼からは熱烈な好意を返され、念願だったつかの間の幸せを手に入れます。

しかし、彼は目の前の未帆が、かつて「モンスター」とよばれていた同級生と同一人物であるとは気づきません。

ある日、二人きりで会っているさなか未帆は激しい発作に襲われます。動揺した彼に対して未帆は最後の力をもって自分の正体を明かします。

全体を通して、フィクションしかありえない設定だと感じる箇所もありましたが、エンターテイメント性を求めての読みごたえは抜群でした。

あらゆる登場人物が持つエゴや、隠しておきたい本性で愚かな行動をとってしまう人間も描かれていて、現実の生活に落とし込んで「あるある」と思いながら読み進めても面白いと思います。

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